2017年9月20日水曜日

懐かしいインターネットの話

企業の情報システム部さんを訪問するのが日課である。

いつもの商談で、本題の提案に入る前に、「アイスブレイク」を行う。アイスブレイクとは、”暑いですね”とか、”もうかりまっか?”とか、”連休はなにしてました?”とか、たわいない話をして、お互い話がしやすい関係を作ることを目的とした行為のことだ。アイスブレイクは、一般的に営業マンから仕掛けることが基本と営業研修などで習うが、お互いが自己開示をしないと、ビジネストークをする上で必要となる信頼関係は築けない。対等にお互いの利害を一致させていくBtoBの商談においては、アイスブレイクは、お互いの責任で行う儀式である。いわば、できる社会人共通のマナーだ。

 時にアイスブレイクが盛り上がって、本題になかなか入れない時があるのだが、今日はこんなことを話した。懐かしいインターネットの話だ。

 今日の訪問では、アイスブレイクでひょんなことから、当時20歳くらいのお客さんが、いわゆるパソコン通信(インターネットを通して、テキストだけでメッセージを交換するサービス)をしていて、静岡県〜奈良県といった遠距離でありながら、知り合って、デートをして、付き合ったという話を聞いた。

 テキストだけという点で、非常に特殊である。メラビアンの法則では、見た目から9割相手の印象を感じ取るそうだ。

 2017年現在ではあんまり考えられないような出来事にビックリするのと同時になぜか自身も体験したことがあるかのような感慨深さを覚えた。
 お客さんの話を聞いて私も下記のような自己開示をしたら、今すぐ飲みに行きたいと思えるくらいに共感レベルが高まった。

 かくいう筆者も2002〜2004年くらいは、中学校の部活から帰ったらオンラインゲームのハンゲームで知らない人と大富豪やらチャットやらにはまっていた。
 そこでは、お客さんのような恋愛体験こそはなかったものの、顔を知るすべのない他者と親密な時間を過ごしてきたのだ。
 中には1月1日に、お年玉といってゲーム内で使える仮想通貨”ハンコイン商品券”をくださる方もいた。確か金額は500円だった。中学生には500円は決して少ない額ではない。

 金額以上に嬉しかった。親戚以外でお金をかけてまで、優しさを示してくれる人がいることに、なんとも言えない喜びを感じたことが今でも脳に刻み込まれている。
 残念ながら、当時の人たちと今でも繋がるということはできていないものの、今でも彼らの優しは筆者の心の中で、生き続けている。
インターネットが優しかったと言われる頃の話である。

 ここ最近のインターネットでは、知らない人同士が繋がるハードルが低くなった。
便利になりすぎたと思うときもある。
 
 顔の素敵な人と年収の高い人がマッチングすることに特化した出会い系があり一部の人の価値観を変えてしまった。匿名で実名の誰かを簡単にバッシングできるほどに、通信コストは下がりUIは便利になっている。
 とりあえず顔は知らないけど繋がってみて、0からコミュニケーションをとってお互いに支え合う関係を作るなんて余裕は忙しい私たちにはもうないのだろうか。

 当時の単純に文字と文字だけで繋がって、話をしているうちに趣味が合うなどして相手のことをもっと知りたいと思うような機会は、一体今後あるのだろうか。ちょっと寂しい。かくいう筆者も昔と同じことをやろうとはなかなか思わない。。。

 何が本当に大切なのか。ゆっくり立ち止まって、インターネットとの付き合い方を考え得るべきタイミングになっているのかもしれない。

●書籍の紹介
優しいインターネットとかの話は、家入さんの”さよならインターネット:まもなく消えるその「輪郭」について”に詳しく書かれているので、おすすめです。個人的には、同社著書でヒットしている、”なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。”よりも好きです。

また、”さよならインターネット”の中で家入さんが紹介している”弱いつながり 検索ワードを探す旅”も、現代SNSのつながり感を巧みに説明していて、私はすごく共感が持てました。

●書籍はこちらから購入いただけます。
(いずれもkindle版に飛びますが、紙の本も選択可能です。)

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